大判例

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千葉地方裁判所 昭和23年(行)5号 判決

原告 篠崎信夫 外二名

被告 鳴浜村長

一、主  文

被告が千葉県山武郡鳴浜村農地委員改選請求に関し昭和二十二年十月二日なした公示(告示第二十三号)に対し同年十月六日なした取消(告示第二十四号)の無効であることを確認する。

訴訟費用は被告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、その原因として、

一、千葉県山武郡鳴浜村農地委員の内農地調整法(昭和二十一年十月二十一日改正)第十五条ノ二第三項第二号該当の委員について原告篠崎信夫は当該区分に属する選挙権者の総数一九〇人の内原告小倉英司、成川七郎外一二二人の同意を得て昭和二十二年九月二十九日被告村長に農地委員改選請求書を提出し、被告はこれを受理した上、同年十月二日告示第二十三号でこの旨を公示した。

二、然るにその後被告は右請求者の一部から請求の取消があつたため選挙権を有する者の数が二分の一に達しないことになつたと云い、同年十月六日告示第二十四号で前の公示を取消した。

三、しかし前になした公示によつて請求に係る委員三名はその職を失うに至り(令第二十八条ノ三第三項)被告は取消すべき権限がないのに公示を取消したのであるから、取消の無効確認を求める、と述べ、

被告の抗弁に対し、原告等に欺罔行為のあつたことを否認し、

四、公示がなされた後においては、法令の明文のない以上、直接請求者は署名の取消をなし得ないし、また被告自身において公示を取消すことも許されない。

五、原告篠崎は失職した委員によりその失職後鳴浜村本須賀に所有する約三五筆の田畑を買収されたのであるから、たとえ農地委員がその後改選になつてもそれ以前の時期における公示の無効確認を求める利益がある、と答えた。

(立証省略)

被告訴訟代理人は請求棄却の判決を求め、原告主張事実中一、二を認めると述べ、

抗弁として、

四、公示後その取消までの間に伊藤正已以下四十七名の者が原告等の欺罔による錯誤のため請求書に署名捺印したという理由で署名捺印を取消し、その結果請求者は法定の二分の一の数を欠くに至り直接請求なきに帰したので、被告は公示の取消をなしたものである。

五、原告の改選を請求した農地委員は昭和二十四年八月十八日改選された。元来確認訴訟は現実の法律的必要がある場合に限つて許される。即ち被告との紛争又は利害の衝突がありこれを解決調整するために適切且効果的であることが必要である。原告等は改選請求後その者等が鳴浜村農地委員中農地調整法第一五条ノ二、第三項第二号委員としての構成員として原告篠崎所有の農地買収の計画を樹立されたことは、その資格喪失後の行為であるから無効である。従つて公示の無効確認を求める利益があるというけれども、確認の利益はその判決を求める現実の法律的必要がなければならない。原告篠崎は既に買収計画に対し異議訴願をしている。これによつて違法を是正されれば事足り、是正されない場合は更に該買収計画の無効を行政事件訴訟特例法により主張し得るのであるから、本件確認の利益がないと考える、と述べた。

(立証省略)

三、理  由

改選請求の基礎となつた署名捺印の取消は請求に基いて公法行為がなされた後は直接請求が合成行為たるところから許されないものと解されている。本件においては改選請求に基いて公示がなされた後には署名捺印が取消されたというのであるから、その取消は法律上許されなかつたものである。

従つて右署名捺印が有効に取消されたものとしてなされた被告の行為(公示の取消)は権限なき機関の行為として無効といわなければならない。

被告は原告等に無効確認の利益なき旨主張するけれども、原告等が直接請求を求め乍ら被告は権限なきにその手続を中断せしむる行為をなしたるものであるから、原告等にその違法行為の無効確認を求める利益あるものと解する外はない。農地委員の改選により改めて選挙する必要はなくなつたとしても、公示による農地委員の失職後改選に至るまでの期間に対しては公示の無効確認を求める権利は原告等に残つているものと考えられる。

よつて原告の主張を正当として認容し、訴訟費用につき民訴法八九条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判官 高根義三郎 須賀健次郎 杉田洋一)

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